刺激的で濃密な毎日を送りながらも、
いつも変わらない姿勢でそこにいる。
一途な思索を胸に秘めながら、
彼だけが歩んでいる一途をたどる。

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仕事もプライベートも"N極とN極"みたいな関係がいい。
互いに自分のテリトリーを持っていて、
どれだけ近づいても、そこだけは侵されないような

めったに着ない麻のスーツに身を包んだ瞬間、下町の路地裏に完璧にはまる振る舞いになる。普段は周囲までゆるんでしまうほど飾らない自然体。それは楽屋でも現場でも変わらない。けれど、ここぞという時は、華やかな"表の顔"を見せる。

「"本番に強いね"ってよく言われる。ありがたいけれど、なんでかな?自分では"表の顔"を見せようなんて意識すらないのに。まあ、どんな場にいても緊張しないからかもね」

さらりと言うけれど、それこそ、難しいことだ。緊張しないでいられるのは踏んできた場数が多いから?

「経験の数より意識だと思う。誰かに楽しんでもらうための仕事なのに、自分のことを考えて緊張してる場合じゃないからね。それに、自分に過剰な可能性も感じてないし(笑)。長年、自分とつきあってきて、何ができて何ができないのかくらいはわかってる。自分をよく見せようとは思わず、無理なことをやろうとしなければ、緊張しないもんだよ」

どんな仕事も、事前に自分の中で算段をしておくと焦らないと言う。

「本番前に自分がやるべきことはだいたい想定してるし、大きくはみだしたりしない。共演者には自由にやってもらいたいし、それが楽しいんだよ。でも、自分は予定外のことに挑戦しようと思わない。だって、オレがやっていることは、"芸術"じゃなくて"娯楽"だもん。偶然のハプニングで感動を呼べたとしても、二度と再現できないでしょ。ピカソの絵なら、その貴重な一枚に価値がつく。でも、オレの仕事は個性的な一枚の皿をつくることじゃなくて、みんなが使いやすい同じ皿をつくり続けること。実はこれが意外と難しいんだよ。重ねて収納できるような同じ皿をつくり続けるって、偶然と才能だけじゃ絶対できないから」

やはり、根っからの職人気質。その美意識の保ち力も生きる姿勢も、職人のあり方に限りなく近い。


"特別"を自分に期待しない
本番で解放すればいい



「いつも刺激的とか、毎日フルに充実してるなんて疲れない?(笑)。オレは撮影中の今みたいに、決まった時間で仕事して帰って台本を覚えて寝る、みたいな一定のリズムの生活こそ素晴らしいなと思うけどね」

実際のところ、日々同じスケジュールで生活はできない仕事。それでも、心の中にはいつも安定したリズムを保ちながら過ごしている。

「舞台や映画で演じる仕事をする時も、特別なことをやろうとは思わない。お芝居も自分の中にずっと変わらないシンプルなロジックがあるだけだし……。そうしてるとさめた人間に見えるのか、稽古中に監督や演出家に『もっと自分を解放して!』とか『感情的になれ!』って言われるけど、そう言われても……って時も(笑)。それこそ、本番に解放すればいいっていう考えだから」

外的な影響を受けない、容易に相手の意のままにならない人。それでもニノは、多くの巨匠と呼ばれるつくり手に求められ、愛されている。

「愛されてるかどうかはわからないけど(笑)。選んでもらえたのは、もともと持ってるものが大きいからかな?この中途半端な体系と派手じゃない顔立ちだから(笑)、『母と暮せば』でも実年齢より若い役をもらえたのかなと。親に感謝だよね!黙ってるだけなのに悲しそうとか、何かを考えてそうな顔に見られるのも、親のおかげかもね(笑)」

ニノには現実の生活や表向きの顔だけじゃない、その奥にさまざまな顔や感情が隠されているように見える。想像力を喚起させるから、また、人や作品を呼び寄せるのだろう。

「でもね、誰もが表に見せない部分を持ってるし、少なくとも裏表ある人のほうが好きだけどね。オレの場合は、そもそも出会う人たちに恵まれてるんだと思う。でも、もしそのスゴイ人たちにオレが多少なりとも好かれてるとしたら、"邪魔にならない存在"だからじゃない?現場では毎日、同じような表情と態度で、同じ場所で同じ行動をとってる。感情的にもならないから、気にとめなくていいし、ラクなんだと思う」

それってホントに好かれるコツ?

「わかんない(笑)。でも安定感は大事じゃない?オレは、裏があっても安定してる人と一緒にいるほうがラク。磁石の"N極とN極"みたいなつきあいがいいんだよね。互いに自分の絶対的なテリトリーを持っていて、好意を持って近づいていっても、そのテリトリーだけは侵さないし、侵されない。仕事はもちろん、プライベートでもそういう関係性が安心だなぁ。まぁ、女性には難しいことなのかもしれないけどね(笑)」



取材時は、映画『母と暮せば』も撮影中で、日々、長崎の方言の長台詞を覚えているというニノ。「毎日、家に帰ってから覚えてる。コレがなかなか大変なんっすよ!」と冗談めかして言うけれど。スタッフ情報によると、現場はスムーズで山田監督も絶賛しているとのこと。公開が待ち遠しい!



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長年思っていることが、二宮さんって、ファンや視聴者からの支持よりも、現場で一緒にお仕事をした人からの信頼や賞賛というものが圧倒的だということ。
もちろん彼のお芝居やアイドル業を見て「すごい」とか「かっこいい」とかいう評判はとっても多いけど、その前提として同じ作り手側からの信頼が見えるからこそ、私達も更に更に好きになって、深みにハマっていくんだろうなぁと。
なんていうか、数々の作り手様にお墨付きをもらい続けている彼を見ていると、「どうだ!うちの二宮すごいだろ!」というような気にさせてくれるのってやっぱファンの間には共通してある感情なんじゃないかと思っているんですけど。

懐に入るのが上手いという点でもそうですけど、誰からも愛される理由ってのは生まれ持ってのものなんだと思うんですよね。彼の言う「親のおかげ」。
二宮和子さん、和也くんを産んでくれて本当にありがとうございます(笑)。