この言葉が今になって胸にくる。
もう一度、大きく成長した二宮さんと蜷川さんが一緒にお仕事をする姿が見たかったです。
天国で彼の活躍をこれからも見守り続けてくれたらいいなぁと思います。



蜷川さんから二宮さんへの過去のお言葉の数々


初めて会ったときの印象は"いい顔してる"そして"心のなかに人を寄せつけない強さがある"ということ。だから、心のどこかにある他人に見せない"核"、それを俺が引き出せばいいんだって。繊細そうで秀一役にぴったりだと思った。
いざ読み合わせをすると下手で最悪、家へ帰って女房に言ったんだよ「二宮君下手でさァ」って。でも撮影に入ったらすごくよかった。勉強したんだね。頭よくて勘もいいから、"こうならないかな"って言うだけでわかってくれて、あとはほっとけばよかった。台本も人前では一度も開いたことなくて、相手のセリフまで覚えてる。あんなにハードスケジュールだったのに、現場で生あくびひとつしなかったし。撮影の合間はずっと2人でバカなことをしゃべってたね。演技の話もたくさんして、すごく楽しかったよ。俺とだと"孫とおじいちゃん"か?でも俺は仲のいい友達と一緒に仕事してた感覚かな。


彼は、ちょっと身を引いて人と接するんだよね。状況に対しての温度も低い。つまり頭がいいのです。でも、二宮くんは、人をちゃんと見てるよ。他人との距離のとりかたもうまいしね。そして、現実に対する違和感を表現するときの演技は、天才的。


想像以上に良かった。あの世代の演技者としては、世界レベルでも十分通用すると思う。あの若さで、あんな繊細な演技ができるなんて。初めて会って、5,6分話しただけで、二宮君と心中しよう、と決めたくらい。


ガツガツしては見えないんだよ。ひそやかで、繊細なの。実は撮影中、台本を持って現れたことはないんだ。全部セリフを頭に入れて来てんだよ。非常に繊細だし、柔軟ないい子。休憩時間には、二人で映画の話もいろいろしたしね。『灰とダイヤモンド』の演技は60年代にどういう意味があったのか、とか、ジェームズ・ディーンはどんな風に登場したのか、なんていうことを離して、『演技にはルールなんてないから、自由にやってごらん。いいとこは俺が絶対撮るから』と言ったんだ。


一生のうちにね、何度も出会える役じゃないから。人生になんともチャンスはないんだよね。それをまずつかんだ。二宮くんのために本当によかったと思うね。19歳でね、世界レベルで見ても映像でこれだけの演技をする俳優はそういないよ。僕は世界で仕事をしていて、世界の俳優のレベルがどれだけすごいか知ってるわけ。その中でもすごくいい演技をしてると思ったんだから。繊細な演技も骨太の演技もちゃんとできる。すごいよ、才能あるよ。観客の人は世界のトップレベルの演技者として見てあげてほしいな。


お前が見ろって言うから『熱烈的中華飯店』も見てるぞ。個性的な俳優のなかで堂々としかも自然に演技をしてる。教えてくれた漫画『鉄筋コンクリート』も読んだぞ。恥ずかしいから娘に買わせたけど、面白かったよ。うちの女房の友達軍団も鎌倉ロケですっかりお前の「足元に気をつけて帰ってくださいね」の一言に参って「なんてデリケートで優しいコなの!」ってファンになって映画見て泣いてたぞ。おばさんキラーなんだな(笑)。また一緒に仕事しような。早くしないと俺は死んじゃうぞ(笑)。




二宮さんのお芝居への道を切り開いてくださった方でした。本当にありがとうございました。
ご冥福をお祈り申し上げます。